笹原りむ
再生氾濫原アザメの瀬の有する生態的機能に関する研究報告
島谷幸宏(九州大学大学院工学研究院環境都市部門)
小崎拳(九州大学大学院工学府都市環境システム工学専攻)
辻本陽琢(国土交通省港湾局技術企画課)
池松伸也(九州大学大学院工学研究院環境都市部門)
本研究で対象とするアザメの瀬は,国土交通省の自然再生事業により整備された氾濫原湿地である.松浦川河口から縦断距離15.8km 地点に位置し,延長約1000m ,幅約400m で面積約6.0ha を有している.アザメの瀬は,大小複数の池,河川本流と接続しているクリーク,棚田状の水田,およびそれらの周りの湿地によって構成されている(図-1,図-2).アザメの瀬は,魚類の産卵や出水時の避難場所や植物の種子の漂着場所など,多くの生態的機能を有する氾濫原的湿地環境を再生すること,およびそれら生物と人のふれあいを再生することを目標として整備された.これらの目標の設定および,アザメの瀬の計画立案は,徹底した住民参加により行われており,実現した計画案には,住民意見が強く反映されている.
2010年4月現在アザメの瀬は,竣工から約6年が経過している.魚類のモニタリング調査では,アザメの瀬内には32種の生息が確認されている1).湿地性の植物の再生や,ナマズ・フナ・コイ等の産卵,氾濫原依存種であるヌマガイ・バラタナゴ属の生息も確認されており,氾濫原の生態
的機能が着実に再生されつつある1),2).
小学生を対象とした環境学習体験などの活動も竣工後継続的に実施されており,人と自然のふれあいについても再生されつつある.つまり,アザメの瀬では,ラムサール条約で提唱されている“Wise use ”の実践がなされている.また,日本における数少ない氾濫原湿地再生事例として,学術的にも重要な知見が,アザメの瀬における研究から得
られている2),3).
ここでは,これらアザメの瀬において行われている研究および社会的な取り組み
図-2 アザメの瀬風景
参考文献
1) 国土交通省九州地方整備局武雄河川事務所,アザメの瀬地区環境調査業務報告書(平成15年度‐平成19年度)
2) 林博徳,辻本陽琢,島谷幸宏,河口洋一:再生氾濫原におけるドブガイ属の生態と侵入システムに関する事例
研究,水工学論文集,第53巻,pp.1141-1146, 2009
3) 林博徳,島谷幸宏,泊耕一:自然再生事業における維持管理体制の在り方に関する一考察,河川技術論文集,第16
巻,pp.535-540,20109
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